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Слова дня / 今日のベラルーシ語 (2016.07.15)

今日の単語は талерка(タレールカ)。意味は「皿」です。

このベラルーシ語の単語を見て、恐らくロシア語を学んだことのある方はあることに気づくと思います。そう、ベラルーシ語のталеркаは、ロシア語の「皿」を意味するтарелкаと比べてみるとрとлが入れ替わっているのです。рとлの区別に疎い日本語話者には、まるで間違い探しのような違いかもしれません。

これは、語を構成する音素の配置が入れ替わってしまう音位転換(metathesis)という現象で、あらゆる言語に日常的にみられるものです。例えば、日本語の「雰囲気(ふんいき)」という単語を「ふいんき」と読む人は少なくないのではないでしょうか?実は、これは身近な音位転換の典型例です。「ふいんき」のように音位転換は単なる言い間違いとしてよく起こるのですが、やがてそれが多くの人に使われるようになって定着することがあります。

ベラルーシ語のталеркаとロシア語のтарелкаは正に音位転換が定着した例です。ベラルーシ語とロシア語の場合は語本来の形に近いのは実はベラルーシ語のталеркаで、ロシア語のтарелкаは音が入れ替わった形が定着したものです。

さて、талеркаというと、3年ほど前に西ベラルーシのブレストを訪れた際に見た忘れられないお皿があります。 要塞で有名なブレスト。一ヶ月ほど前に朝日新聞デジタルでブレスト要塞の防衛博物館の記事が出ていました。 

digital.asahi.com

 記事には出てきませんが、この博物館の一角にひっそりと一枚のお皿が展示されています。それがこちらです。

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これは戦地で名も無き兵士の使っていた食事用の深皿だそう。お皿にはロシア語で "Миска жирная, а пища постная"(皿ばかり大きくて食糧はまるで精進料理のよう)と彫られています。食糧事情の厳しい戦時下、前線で国を護る兵士といえども質素な食事しか配給されなかったのでしょう。そんな厳しい状況が窺い知れます。

この一文と合わせて目を引くのがお皿の真ん中に彫り描かれた一匹の猫。枕か土嚢かの上にちょこんと座りこちらに背を向けた一匹の猫の絵は、寂しげながらどこかチャーミングです。肉も魚も無いような質素な配給食でも、食べ終わればこの猫の絵が姿を現す。張りつめた緊張が一瞬でもふっと緩むような瞬間だったことでしょう。過酷な戦地での毎日を少しでも前向きな気持ちで乗り切ろうとした一人の兵士の、ささやかな工夫が何だか印象深く、忘れられない「一皿」です。

 

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3年前に訪れた冬のブレスト要塞の写真。

 

2016.07.15の単語:「皿」талерка(タレールカ)

 

文責:清沢